いらっしゃいませ、こんばんわんこそば! すきやばしさぶろーでございます。
わたくし会社勤めですが、休日は、たいてい家でしこしこと寿司を握っております。平日も、鮨さいとうの握り動画をリピートで見ながら、ティッシュをシャリとネタに見立てて、しこしこと握りの練習をしております。
今日は、めずらしく書評と申しますか、伝統の技を検証したいと思います。
「The Science of SUSHI すしのサイエンス」
ぐっとくるタイトルの本が発売されました。その名も、「The Science of SUSHI すしのサイエンス」。鮨さいとうで修業した、鮨たかはしの高橋さんが技術指導されています。
なかなか面白い本です。
世の中に寿司の教本はたくさんありますが、その多くは、有名店の大将が出てきて、「これがうちのやり方です」という感じに権威を見せつけるというか、「よくわからないが、経験と勘がすごいからできるんだ!」と読者に思わせるつくりになっていました。
でも、この本は、なぜそうなるのかという説明にけっこう紙幅を割いています。そのため、理解し納得しながら読み進めることができます。他の本でありがちな、「本当かよ?」というつっこみが少ないので良いですね。
たとえば、熟成についても、こんな風に図やグラフを用いてわかりやすく説明してくれます。
「サイエンス」というと大げさですが、理論重視で画期的な本だと思います。
が!!! やはり出たーー。寿司の都市伝説である、あの工程です。。
「シャリに空気穴をあける」という伝統の技
これです。「すし飯の真ん中を左手の親指でぐっと押します。」ですって!!
「真ん中に空気が入り、米粒がつぶれずにふんわりとした握りとなります。」ですって!!
この手の解説は、溢れるほどあります。
たとえば、違う本ですが、こんな感じですね。寿司職人の9割はこれやってるんじゃないでしょうか? 私も、最初はこのとおりやってました。
でも、最近、こんなの都市伝説にすぎないのでは? と思っています。
なぜなら、まず、あの鮨さいとうの斉藤さんがやっていないから。
ポンっと親指で軽くはたく程度で、ギュッと押してはないですよね。
だいたい、ギュッと押したら、そりゃ大きい穴はできるかもしれませんが、米と米の隙間が圧迫されません? つまり、空間にむらができるのでないかというのが、最近の私の見立てです。
現に、自分の経験ですが、穴開けをやめてからフワフワ感がなくなったということは全然ありません。フワフワ感は、穴ポコなんかじゃなく、シャリが炊き上がってからの経過時間と温度こそが大きく影響しているはず、というのが、経験と観察からの予想です。
とはいうものの、この本の技術指導の高橋さんは、鮨さいとう出身ですからね。鮨さいとう時代は開けなかったけれども、やはり開けた方が良かったという判断かもしれません。
これは、自分で検証しないことには、簡単には否定できない課題だなと思ったわけです。
穴ポコの有る無しを比較する
シャリは、赤酢と米酢のブレンド。ロゼシャリです。
とりあえずシャリだけ握ってみて、断面を撮影してみます。シャリの断面なんて、美味しんぼで読んで以来です。そのときは、CTスキャンでしたね。
包丁で切るとか、うまくできるのかな?
穴あけバージョン。
たしかに、穴ポコができてる!
穴無しバージョン。
そんなに違いはわからないけれど、たしかに穴ポコはないですね。
では、寿司にして食べ比べます!
↑↑鯛です。まずは、最近いつもやってる穴無しバージョン。いつものふわっとした食感ですね。美味しい。
↑↑次に、穴有りバージョン。
なんか、ダマというかムラがあるのを感じました。気にならない程度ですが、意識するとわかります。
↑↑ノースカロライナ産天然生本マグロ8日間自宅熟成@真空チルド。穴無しバージョン。
旨いな~。ちょっと変色始まってしまいましたけどね、味はとても良いです。
もちろん、しゃりはフワフワ。ほろほろ。
↑↑トロたく。けっこうしっかりめに穴開けました。
別に。。。
穴開けの効果はわからずです。
ほかにも数貫試してみましたが、ほとんど違いはわかりませんでした。
結論
「シャリに穴を開けて握ると、真ん中に空洞ができる」というのは本当だということはわかりました。
しかし、それは、「ふんわりした握り」を意味するものではなく、食感とは関係ないか、あるいは、むしろ食感のムラにつながってしまうことがある、と結論付けなくてはなりません。
やはり、鮨さいとうの握りフォームを目指す判断に間違いはなく、今後も、穴を開けずに握っていこうと決意を新たにしました。
すきやばし さぶろー
※魚の熟成については、「食品衛生に関するご注意」をお読みください。